AIを用いた店舗向けBGM選曲システム
2020年9月、USEN-NEXT GROUPの株式会社 USENと共同研究を進めてきた「AI BGM」が、プロダクト「U MUSIC」として正式にリリースされました。本プロジェクトにおいて、QosmoはAIを用いたBGM選曲技術の提供及び再生画面に表示されるバックグラウンドビジュアルを担当しています。HANEDA INNOVATION CITYなどの大規模複合施設の他、さまざまな店舗にて導入が開始されています。
従来は、専門の担当者によって制作された限られた番組(チャンネル)の中から、各ユーザ/店舗が好みのものを選択する仕組みでした。多数のチャンネルが用意されているとはいえ、全てのユーザ/店舗のニーズを満たすことは不可能でした。そこで、今回新しい選曲システムとして、季節・天気・時間帯などの変化に合わせてAIが曲をセレクトし、常に店舗の状況やオーナーの好みにぴったり合うBGMを自動的に実現するシステムの実装を目指しました。
第一フェーズとしてスタートしたのは2019年7月1日。虎ノ門ヒルズにある「THE CORE KITCHEN/SPACE」にて約1年間の実証実験を通して、検証を重ねました。実証実験に関する詳細はこちら。その後、2020年1月末に新オープンした三井不動産株式会社が展開する法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング日本橋三井タワー」にて、議論の活性化、心地よさやリラックスを促す仕掛けのひとつとしてAI BGMを試験導入しました。
まず、USENが提供する楽曲1曲ごとにメランコリック・夏っぽいといったような特性を示す「タグ」を手作業でつけました。これらのタグがつけられた楽曲約50万曲を学習し、新たな楽曲に対して自動でタグを付与することができるAIモデルを開発しました。学習に用いたタグには、メランコリック・爽やかなどのイメージワードやジャズ・ロックといったジャンルの他、楽曲それぞれに相性のよい時間帯や季節、天候などを含めました。それらをスコア化することで、AIが1曲に対する特徴を幅広くとらえられるようにしています。
興味深いことに、AIによるタグづけは、「軽やかであると同時に、センチメンタルでもある」というような、人間では定量化しづらい”中間”の領域まで入っていきます。これにより、従来のシステムでは選曲されなかった意外性を含んだ楽曲同士が、年代を問わず、これまでと異なる曲順で選曲されることを期待しています。
選曲される際には、付与された特性の他に、そのときの時間帯や、季節、天候といったリアルタイム情報を取得して、環境変化に伴った自動選曲ができます。また、ユーザーが選曲に対しLike/Dislikeを指定でき、自動選曲でありながらもユーザーの趣向に合うプレイリストが生まれるよう機能を追加しています。
実際にどのように一日の選曲を行っているかというと、リアルタイムに取得された天候などの情報と、前後の選曲を考慮に入れた上で、高次元空間に分布された楽曲群の中をゆっくり移動していくようなイメージです。これにより、楽曲の雰囲気がなめらかに変化する自然な選曲の実現を目指しました。
類似したレコメンドによって、新たな音楽と出会う機会が少しずつ減ってきているこの時代に、ジャンルも年代も飛び越えながら一連の流れをもって音楽を届けてくれる「U MUSIC」が、知らなかった楽曲との新鮮な出会いを提供してくれることを期待しています。
徳井直生 (Qosmo, Inc.)
Max Frenzel (Qosmo, Inc.), Bogdan Teleaga (Qosmo, Inc.)
Bogdan Teleaga (Qosmo, Inc.)
堂園翔矢 (Qosmo, Inc.)
大和 比呂志 (Signal Compose, Inc.), 高橋ゆみ (Qosmo, Inc.)
こちらのプロジェクトはQosmo Music & Sound AIを使用しています。